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31

Aug

薮の中

我が家の裏に、電話をする女性の気配が。

かなり興奮しているイカレ気味の大声。早口でまくしたてる。

聞こえてきた話の内容は、こういうものだった。

「お父さん、私の話、お願いだから最後まで聞いてね。さっきね、お母さんから電話があったの、電話切らないで!!お願い!……お母さんが全然意味の分からないこと言ってるの。お母さんが言ってたことそのまま言うけど、ヘンなんだけど、最後まで聞いて。お母さんがね、ベランダに私の大きなマッシュルームのブラジャー干してたって言うんだけどね、私にも分かんないよ!マッシュルームなんて!でね、干してたはずなのになくなってたんだって、だから今日は外に出たら危ないって言ってるの。違うの!!だからね、お父さんからお母さんに伝えて……電話切らないで!!つ・た・え・て!!お母さんに!私はマッシュルームのブラジャーなんて持ってないし、お母さんもそんなの干してないの!だから!違うの!もう!あのね!!危なくなんかないの!!……」

表の通りの方に移動してしまい、続きは聞こえなくなってしまった。

最初は「果たして、イカレてるのはお母さんなのか娘さんなのか。どっちなんだろう。どちらにしろ、お父さんはタイヘンだな」と思っていた。

でも、しばらくしたら「電話の相手のお父さんなんて存在してなくて、独りでつながってない電話に話してただけなのかもしれない、それどころか電話すら手にしていなかったのかもしれない」と思うようになった。

もしかしたら、ホントは電話をしている女性自体存在していなかったのかもしれない。

真実はもはや薮の中。